第14章 夏休み合宿~五日目~。
高さのネコチームと、攻撃のフクロウチーム。今日何度目かのスパイクを木兎さんが決めた。そして、いつものように叫び出す。
「キタァーッヘイヘイヘーイ!!」
"エースの心得"とでかでかと書かれたTシャツの裾で、滴る汗を拭う。Tシャツに書かれている内容には共感できる。良いこと書いてあるし。でも着ている人間がどうも…←
「木兎さんっ、い、今のっ!?」
「今のはリバウンドだ!」
「リバウンド!?カッケェー!」
腰に手をあて、自慢気にふんぞり返る木兎さん。翔ちゃんも小学生みたいに興味津々だ。
「今のって逃げたんスよね?」
『プッ…』
「そこー!笑うなー!」
京治さんの指摘に、思わず吹き出す。
「…でー、リバウンドって…ナニ?」
カッコいいとは言ったものの、どんなことかは良く分からないらしい。私は翔ちゃんにも分かるよう、言葉を選んで説明した。
『"リバウンド"っていうのはね、ボールがブロックに捕まるだろうな、っていうときに使うの』
「えーと、具体的にはどんな…?」
『ブロックにわざとボールを当てる。それが跳ね返ってきたところを、体勢を整えてもう一回攻撃し直すの』
「そうだ!」
えー、同調してらっしゃる木兎さんは、スルーさせてもらうとして…←
「よーく聞けよチビちゃん。床に叩きつけるだけがスパイクじゃない。落ち着いていれば戦い方は見えてくる」
おぉーっ!と目をキュピンキュピン光らせてる翔ちゃん。やってみます!と元気に返事をして、ボールに向かっていく。
いっつもボールを向いてる翔ちゃん。その姿は、いっつも太陽を向いてるヒマワリのようだと思った。咲いたら枯れてしまう運命だけど、翔ちゃんがヒマワリだったら、きっと冬中咲き続けるのだろう。