第13章 夏休み合宿~四日目~。
クロの側からさっと離れ、席戻る。みんなの視線が刺さるようで、痛い。
『うあぁぁあぁああっ///』
ハズいハズいハズいハズい…恥ずかしいっ!
謎の叫びを上げてパタパタと足を上下にさせる。顔が赤いって分かってるから、腕で覆って見えないようにする。
「お前…考えたな」
ニヤリ、とクロが言った。
そう、私は確かにクロにキスした。でも、それは唇に、じゃなくてほっぺた。クロはどこにキスをしろ、とは言ってないからね。
『うぅ…恥ずかしい…///』
「んだよー、たかがほっぺじゃねーかよ」
ゲラゲラうるさいクロを、きっと睨んだ。
『うるさい…恥ずかしいものは恥ずかしいの。それに、みんな見てるし…』
二人だけならまだしも、みんなの視線が気になってしまう。事実、大地さんと木兎さんはなんとも言えないような顔だし、京治さんも何か言いたそうだった。
「…朱里さんは、好きでもない相手にキス、するんですね」
ガッカリしたように京治さんが言った。
「目の前でイチャコラしやがってー!」
私が何も言えず、口をつぐんでいると、もう一回だ!と木兎さんが叫んだ。
「いいです、俺もう寝ますんで。後は皆さんでやっててください」
おやすみなさい、とだけ言って、京治さんが教室から出ていった。気まずい空気が流れる。せっかくいい感じだったのに。
そんな中、木兎さんは空気を読んでないのか、そもそも読む気がないのか、一人元気に声を出した。
「くーろーおー、早く配れよー!」
「でも、赤葦行っちまったぞ?」
「いーの。あかーしはいつの間にか戻ってるからいーの」
なんてヒドイ先輩だ。でも私は木兎さんよりもっとヒドイことをしたんだ。あれは京治さんにはあんまりにも酷だった。
気付いたときには体が動いていた。
『私っ、行ってきます、おやすみなさい!』
吐き捨てるように言って、私は急いで教室を出た。京治さんに言わなきゃ。ちゃんと言わなきゃ伝わらないって、知ってるんだ。