第13章 夏休み合宿~四日目~。
京治さん、どこにいるんだろう。まだそんなに遠くには行ってないハズ。近くにいるだろうと思って、教室の周りをうろうろ捜す。
『…あ、いたっ!』
京治さんはホールになったところのベンチに座っていた。遠くからでも分かるため息を吐いて、自販機で飲み物を買っていた。
見付けたはいいけど、何て言おう!?何言うか全くかんがえてなかったや。こんなとき、自分の無計画さが兄さんに似ていてちょっと嫌だ←
『あの、京治さん…』
「っ、朱里さん!?」
声が聞こえたことに驚いたのか、京治さんがビクリと振り向いた。
『隣、いいですか?』
「…どうぞ」
京治さんの隣にちょこんと座る。
「…さっきはすいませんでした。彼氏面とか嫌でしたよね…」
京治さんの言葉に、びっくりした。そんなことを思っていたなんて。
『そんなっ、全然です。むしろ私の方が京治さんに申し訳無いことしてました…』
自分に想いを伝えてくれた人。その人の目の前で他の男にキスなんざ。私ってば、無神経にも程があるよ。
『なんかもう、頭の中ぐちゃぐちゃで。クロは最近変だし、蛍くんにもコクられるし。京治さんにも…』
キスされて…と言いかけて、あの光景がフラッシュバックした。思い出すにつれ、だんだんと私の顔に熱が集まってくる。
「そんなに悩んでたんスか?」
『人の想いを無下に出来ないというか…せっかく想ってくれているなら、それに合うようなお礼をしたいというか…』
「それは違います」
モゴモゴと言った私に、京治さんはきっぱりと、でも優しい口調で言った。
「想いは相手に伝えるものです。見返りを求めて言うわけではありません。相手の気持ちは素直に受け取っておけばいいんです」
『そう、なのかな…』
京治さんの言うことは最もだ。でも、と言いかけたところで、京治さんに口を塞がれた。
『むぐ?』
「何も言わなくていいよ。今はまだ、気持ちの整理がつかないんでしょ?」
言い当てられて、目を丸くした。京治さんは少し笑い、顔に出てますから、と言った。そんなに出てたかな、私?
「自分の気持ちが分かったらでいいです。そしたら返事、くれますか?」
どこか寂しそうな京治さんに、私は何度も頷いた。
合宿も四日目を終え、私の気持ちは少しずつではあるものの、確かに変化していた。