第13章 夏休み合宿~四日目~。
ようやく木兎さんが勝ったのは、次のゲームだった。で、負けたのは私。カードをまとめてトントンと揃える。よし、寝れそうだな。
『あー、終わった。じゃあおやすみなさい』
「あー良かった。勝った勝った。負けたまんまじゃ外出歩けねーもんなー」
『………』
木兎さんの独り言ともつかない言葉に、私は沈黙した。木兎さん、それ挑発ですか?挑発ですよね、そうですね?いいですよ、そこまで言うなら私にだってプライドありますもん。やってあげましょう。
『…クロ、カードきって』
「お、おう…」
明日の朝にここで残ったことを後悔するだろうな、なんて思考は私の頭には無かった。ただただ、単に、木兎さんを負かしてやりたいというそれだけのことだった。
そして、謎の緊張感をはらんだ五回戦が始まった。黙々とカードを睨み、手札を減らしていく一方で、増えている人が一人。
「あのー、俺のカード減らないんスけど…」
『そりゃそうですよ。だって私、draw2ばっかり出してますもん』
「朱里さんが犯人でしたか…」
う~んと唸った京治さん。奥の手だったようで、渋々黒のdraw4を場に出した。
「あの、何でもいいです。俺の番になる頃には変わってるでしょうし…」
「そうなのか?じゃあこれで…」
適当に言った京治さんに、海さんが驚く。
(ここで色を指定しないとは…)
「あかーし、なんかスゲー」
「なんか、カッコいいな」
「え、そっスか?」
京治さんを称賛する声が上がるなかで、クロが私に文句を言ってきた。
「アカリ、お前手加減しろよ」
『え、だってこれ勝負なんでしょ?…ウノ』
「えげつないことするなよー」
『どの辺がえげつなかったっけ?』
「赤葦にばっかりdraw2出すの」
『隣だもん仕方無いじゃん。はい、あがり』
ちゃっかり会話中にウノって言っておいた私は楽々一位で五回戦を終えた。よし、今度こそ寝れるな。でも、代わりに最下位だったのが京治さん。
「あかーしぃ、まだやるだろー?」
「もちろんですよ、木兎さん」
京治さんは、意外と負けず嫌いなようだ。