第13章 夏休み合宿~四日目~。
蛍くんに腕を引かれて歩く。蛍くんはコンパスが長いから、私は小走りになって追いかけた。ブラを留めてないから、胸元を手で押さえながらだったけど。
連れていかれたのは、人気の無い倉庫だった。その倉庫は体育館の影にあるからなのか、ドアを開けるとヒンヤリとした空気が肌を掠めた。
「ここなら人も来ないデショ」
中に入ると、そう言って蛍くんはドアを閉めた。高い位置についた窓から、夏の日差しがこぼれている。明かりといったらそれくらいで、他は何も無かった。
「ていうか、ソレ、早く直しなよ」
『えっあ、うん///』
蛍くんに指を差されて、狼狽えた。なんのために連れてきたと思ってるの、と言われる。今回ばかりは何も言い返せない。
『あの、直すから後ろ向いてて…』
「ん…」
蛍くんが後ろを向いたのを確認して、私はTシャツの裾から背中に手を伸ばした。クロに外されたホックを直して振り向くと、蛍くんがガン見していた。
「ふぅん、今日はピンクじゃないんだね」
『見ないでよ、ってかいつ聞いたの!?』
「灰羽があれだけ言ってたら聞こえるから」
うっわ、恥ずかしい…
てか、リエーフ、一生恨んでやる…
「でもさー、白黒のボーダーって高校生にしてはちょっと幼稚じゃない?僕はもっと大人っぽい方が好きなんだケド」
『蛍くんの好みはどうでもいいよ!』
「どうでもよくないよ。好きな子の下着は自分の好みだと尚良いからね」
そう言うと、蛍くんは私をドンッと押した。急だったから、そのまま私は後ろに倒れた。床に当たって痛いかと身構えると、ポスッと柔らかい音がした。
私が倒れたのは体育用のマットの上。蛍くんが私に覆い被さるようにして、マットに登る。
『蛍くん…?』
「朱里ってさー、本当無防備だよね。見てるこっちがハラハラするよ…」
状況を飲み込めない私に、蛍くんは獲物を前にした肉食獣みたいな顔で、ニヤリと笑った。
「だから喰われるんだよ。こんな風に…」
蛍くんの唇が私のそれに重なった。