第12章 夏休み合宿~三日目~。
天井の蛍光灯がジジッと点滅した。うわ、なんか不気味で嫌だな。外からはゲコゲコ蛙の鳴き声がする。
森然はわりと自然がいっぱいだから、動物とか虫とかも大量。だからさっきみたいな事故が起こるんだよ、まったく。
ミーティングはどこかの空き教室でやるって大地さんが言っていた。ってことはどっかしらにいるだろう。
馴れない校舎をうろうろしていると、一つの教室からボソボソと話し声が聞こえてきた。この教室はどこの学校も借りていないハズだ。ということは、ここでミーティングをしているのだろう。
『…あのー、すみませーん』
開いたドアから声をかけるも反応はない。ひょっこり中を覗いてみれば、六人の男子高校生が円くなって机に向かっている。
大地さんとスガさん、クロと海さん、それに京治さんと木兎さん。森然と生川の主将と副主将はいなかった。
『あの、何してるんですか?』
「どぅおわあっ!?」
変わった声を出しながら椅子からガタンと誰かが落ちた。それは、木兎さんだった。
『それ、トランプ…ですよね?』
私は木兎さんの手を指して言った。よくよく見れば、全員が手にトランプを持っている。
『ミーティング…じゃなかったの?』
「あー、そうだったんだけど…なんかトランプになっちまって。せっかくだからって木兎が言い出したんだよ」
私が問いかけると、クロが言った。いやいや、何が"せっかく"ですか。どの辺に"せっかく"要素があるんだ。
「朱里はこんな夜中に何しに来たの?」
スガさんに言われてはっとした。そうだ、目的を忘れたらいけないのだ。
『そうでした。京治さん、これ…』
木兎さんの隣に座る京治さんに、ずいとジャージを差し出した。
「ああ。明日でもよかったのに…」
『私が気になっちゃうから…その節は、ありがとうございました』
ペコッとお辞儀をすると、京治さんは私の頭をぽんと叩いた。
「役に立てたみたいで、よかった」
『はい、本当にありがとうございました』
顔を上げて、にこっと笑うと、京治さんも少しだけ、笑った。