第2章 音駒の彼ら。
『この話、すっごく長くなると思うけど聞いてくれる?』
「うん。聞く。アカリのこと、ちゃんと知りたい」
『そっか。
小学生の頃にね、私が東京に引っ越したでしょ。近所に1つ上と2つ上の男の子がいて良く面倒見てもらってたの。何も知らない初めての場所で、しかも両親が共働きで帰ってくるのが毎日遅かったから良く泊まりに行ったりもした。そんな中で二人にバレーを教えてもらったの。
ボールに触るのが楽しくって、バレーをするのがすぐに好きになった。中学に入学して、部活は勿論バレー部。バレー漬けの3年間だった。
中学最後の大会で私のチームがピンチになった。一人が足を捻挫してしまったの。その子の代わりに入ったのは経験の浅い1年生で点差は瞬く間に開いていった。
そんなとき、私の足も調子がおかしくなった。踏ん張る度に、ブロックを飛ぶ度にズキズキと痛むの。本当は試合前からへんで、監督からも痛かったら交代しろって言われてたの。
私は迷った。この相手を倒したら優勝だったから。ここで私が抜けたらきっとどうしようもなくなってしまう。そして、私は監督の制止も無視してボールを追い続けた。
結果、優勝することはできた。でもその代償は大きかった。
試合後、すぐ病院に行った。お医者さんには足が悲鳴をあげていると言われた。2、3年はバレー禁止だと。激しい運動を続ければ二度と歩けなくなる。一生車イスだと。
バレーに懸けていた私にとって、それは死刑宣告に等しいものだった…』
そこで一旦、私は区切った。道路が歪んで、滲んで見える。ここで泣いてはいけない。まだ終わっていないんだ。
私は涙を拭き、続きを話し出した。