第12章 夏休み合宿~三日目~。
私が変なことを言ったからか、蛍くんは怪訝そうな顔で言った。
「ちょっと朱里、人を化け物みたいに言わないでくれる?」
『夜の学校ってなんか雰囲気あるから…』
「…もしかして、おばけとか苦手?」
蛍くんはただ訊いただけだったけど、私はびくっと肩を震わせた。それに気付いた蛍くんが、ニヤリと笑う。
「へぇ、無理なんだ」
『べ、べつに?いたら嫌だなぁって程度だし。おばけ屋敷なんて全然怖くないし。むしろウェルカムだもんね』
「僕そこまで言ってないケド?」
蛍くんの指摘に、うっと言葉を詰まらせた。まずい、おばけとか苦手だって完璧バレてるっぽいよ。いや、まだ大丈夫かも。
『じゃ、私入ってくるからね~』
「あ、おばけ」
『どこどこどこどこ!?!?』
「嘘だし」
『…論外』
「アッハ、マジうけるんだけどー?」
くっそ、騙されたよ…
馬鹿なの、ねえ馬鹿なの?としつこく訊いてくる蛍くんを無視し、私は乱暴にドアを開けてお風呂に向かった。ピシャリと閉めれば、蛍くんの笑い声がますます大きくなる。いや、ほんっとに腹立つは、あのメガネ。
『なによ、ツッキーのくせにぃ…』
ぶつぶつと呟きながら、服を脱いでいく。クロたちと一緒に練習したからか、汗だくだった。シャツが肌にへばりついて気持ち悪い。
よし、さっさと浴びてさっさと寝よう。
いつもより早くに脱いで、シャワーを浴びた。ぬるめのお湯が汗を流していく。手早く髪と体とを洗って、浴槽にさっと浸かる。最後なのでついでにお風呂も洗っておく。
『さ、あがろっかな』
ザーッと最後にシャワーを浴びて、体の水気をタオルで拭き取る。湯冷めしたら困るからね。タオルを体に巻いて、脱衣所に出る。
『あれ、ロープかな…?』
ふと、床に見慣れないものがあった。入るときは気付かなかったのに。黒い紐のようなそれは、入り口のすぐそばに落ちていた。
そして拾おうとしゃがんだ瞬間、黒い紐が動いた。よく見れば紐じゃない。光を反射して光るそれは、明らかに鱗っぽい。紐、改め蛇は、からかうようにチロチロと舌を出した。
『ぎゃあぁぁぁあヘビイィィィイ!?!?』