第12章 夏休み合宿~三日目~。
見上げると、クロがよっこらせ、とおっさん臭いことを言いながら私の上から立ち上がった。ほら、と手を出してくれたので、その手を借りて私も立った。
『ねぇクロ、なんで顔赤いの?』
「お前もそーだろ///」
『えっ嘘///』
「なんの茶番デスカー?」
ぽっと頬を染めてそっぽを向いた私たちに、蛍くんが追い打ちをかけた。
『だって!気にしてなかったけど…』
「すごい体勢だったなーと…」
『私が上の方がよかったかもね~』
「それはそれで危険だけど!?」
私がおどけたように言うと、いつものようにクロがつっこんできた。よし、戻った!
「早くしないとお風呂も無くなりますよ?」
京治さんの言葉に、単細胞が三人(もう三人でいいよね)が跳び上がる。
「よし、おっふろ~おふろ~♪」
「日向俺も!」
「ヘイヘイヘーイ!」
我先にと食堂から出ていった三人。取り残された私たち。一瞬の静寂の後、京治さんが口を開いた。
「…じゃ、行きましょうか?」
「デスネー」
『ほら、クロ行くよー!』
「わーったから髪引っ張んな!」
ハゲるハゲる!と叫ぶクロ。仕方が無いから手を放してあげよう。実を言うと、背伸びするのに疲れるんだよね、コレ。
『私最後に入るから、みんな先どうぞ?』
お風呂場の前に着くと、既に単細胞三人が入浴中だった。本当に高校生なのかと疑いたくなるような、派手な水音が男子のお風呂から聞こえてくる。
「あ、僕も遠慮します。朱里の後に入るんで…」
『え、蛍くん入っちゃいなよ』
「この面子だと、面倒くさい…」
なるほど、同感だわ。
というわけで、クロと京治さんを押し込んだ。私は荷物を取りに、蛍くんは避難するために一旦部屋に戻ることにした。