第12章 夏休み合宿~三日目~。
『いったぁ、頭打ったぁ…』
「ってー…わりーわりー」
後頭部を思いっきり床にぶつけた。目の前がチカチカ点滅してる。これ、たんこぶにならないといいけど…
「アカリ大丈夫か!?」
『ああ、リエーフ?へーき…』
「平気そうには見えないけど?」
『ごめん、蛍くんの悪口に相手する余裕がないかも…』
ぱたぱたと足音がして、私たちの周りに人が集まる。
「黒尾ー早くどけよー潰れるだろー!」
「木兎失礼だな!で、大丈夫かよ?」
『う、ん。マシになってきた…』
そーっと目を開くと、目の前には心配そうな顔のクロのどアップ。真っ黒な目に、意識が吸い込まれそうになる。
「おーい、アカリチャン?」
『あ、ごめん。クロの目が綺麗だったから』
そう言って、えへへと笑うと、クロは少しだけ赤くなった。
「お前なー、男にキレーとか言うなよ」
『だってそうなんだもん。ってか早くよけてよ!重たいから80㎏!』
「そんなねーよ、75だわ!」
『どっちも大して変わらないじゃん!』
「5㎏もちげーよ!」
『何よそのトサカ、身長詐欺師!』
「んだと、チービチービ!ムダなトコにばっかり栄養いきやがって…」
『あーっ今女子全員敵に回したからね!?』
「あーもー、うるせえぇぇぇ!!!」
(さっきの雰囲気どこ行ったよ、マジで…)
私たちは体勢そのままに口喧嘩を始めた。まあ今に始まったことじゃないけど。翔ちゃんはオロオロしてるし、京治さんと蛍くんは、傍観体勢だね。木兎さんは野次を飛ばしてる、主にクロに。
「とりあえずその体勢どうにかしません?」
蛍くんの一言にはっと我に返る。クロが私の上に乗ったままだった。