第12章 夏休み合宿~三日目~。
それから練習は進んだ。クロが蛍くんにアドバイスしているのには、心底驚いた。
『いつもと違って先輩っぽいよ、クロ!』
「褒めてんのか貶してんのかどっちだ!?」
貶してるのが七割くらいかな←
トスを見てから跳べ。間に合うときはちゃんと止まって上に跳べ。クロのアドバイスは最もで、MBっぽかった。
クロのアドバイスを受けて、蛍くんがぐっと、ためを作ってから上に跳ぶ。バチっと音がして、翔ちゃんのスパイクを跳ね返した。
「くっそおぉ~!」
「フッ…」
地団駄を踏む翔ちゃんを、鼻で笑う蛍くん。バレーに向き合う態度は変わっても、性格の悪さは変わらないんだね←
2セット目の中盤、あの~、と声が聞こえた。振り向くと、ドアのところに雪絵さんとかおりさんがいた。
「そろそろ切り上げないと、食堂閉まって夜ご飯お預けーですよ?」
「「「なにぃっ!?」」」
おっ、木兎さんと翔ちゃんとリエーフが地面から十数㎝浮きましたね。
『じゃあ今日はこの辺にしときましょーか』
片付けをして、それからみんなで食堂に移動した。
『…それ、何人前あるの?』
「「「三人前っ!」」」
うわぁ…聞くんじゃなかったよ。
木兎さんと翔ちゃんとリエーフのご飯の量が、常人の量じゃないよね。どんだけ食べるのよ。
「ツッキーは食べなさすぎだろ」
「あの三人が異常なんですよ、黒尾さん」
そこの二人、何気に仲良くなってる。
「朱里さんも少ないですね」
『けっ、京治さんも少ないでしゅよっ!?』
緊張のあまり噛みました。蛍くん、笑うな。
「もう少し太れよー、アカリマジで軽すぎだって!」
『クロは太れとか女子に言わない!』
「だってお前肉なさすぎだろ。この辺とか」
『ちょっとセクハラ!何触ってんのよ!』
「腹へっこみ過ぎだっつーの」
『くすぐった、あはは、やっ、やめっ!』
クロがお腹をこちょこちょしてきた。実は私、くすぐったいのが苦手だったりする。
『あははは、おねがっほんとにやめてー!』
「やーだねー」
『きゃ、ははひひひひひ~』
「どっから声出してんのさ…」
蛍くんが呆れてる。
『ちょっと、ほんと…わぁっ!?』
「う、お!?」
次の瞬間、どてーんと派手な音をたてて、クロと私はひっくり返った。