第12章 夏休み合宿~三日目~。
あの後、体育館に行くと、試合は既に始まっていた。今は音駒と烏野の試合中。遅れてすみません、と猫又監督に言い、ベンチに座ってぼんやりとしていた。
ダメだ、さっきのことが頭から離れない…
「アカリ見た!?今のスパイク!」
『…ああ、うん。すごーい、ね…』
リエーフが満面の笑みで叫ぶ。でも、反応は遅れるし、返事は曖昧だった。
みんなは暑さとたまった疲れのせいか、バテ気味。ジャンプの勢いも、アタックも弱まってる気がした。
そんな中、烏野に速攻のチャンス。飛雄くんが翔ちゃんにトス。タイミングが合わず、手の端で押し込む翔ちゃん。
「今の手ェ抜いたな!今のっ落ちてくるトスじゃなかった!」
「俺が…手を抜く…バレーで…?」
取っ組み合いを始めた二人。前後の会話はよく聞こえなかった。なんか飛雄くんが手を抜いたって翔ちゃんが言ってたような…?
「ねー、何があったわけ?」
クロが間延びした声で訊いてきた。私はなんとなく状況を説明した。
『えっと、ここんとこ、翔ちゃんは気持ちよくスパイクを決められてないんだよね。それで飛雄くんが無意識に打たせようとしたのかなぁと。それを敏感に感じた翔ちゃんが怒ってる…のかな?』
スパイクが決まらないのは、翔ちゃんには相当なストレスになっているハズ。それを打たせようとした飛雄くんに、妥協するなって言ってるんだろうな。
新速攻、大丈夫かなぁ…
私の心には不安と焦りが募った。