第12章 夏休み合宿~三日目~。
朱里さんは頭から俺のジャージをかぶったまま、ぐすっと鼻をすすっている。
「朱里さん…」
『うぅ…最悪だよぉ…』
涙声で言う朱里さん。俺はなんだか居たたまれない気持ちになってきた。元はといえば、灰羽のせいなのだ。いや、水遊びをしていた森然の部員が悪い。
「そこ、ちゃんと謝ってください」
びしっと指を差すと、そろそろと逃げようとしていた日向と灰羽はびくりと震えた。
「アカリごめんな…おれがリエーフのこと誘ったからこんなことになっ…」
『翔ちゃんのバカ、だからチビなんだよ』
日向、毒舌により撃沈。
「悪かったって!あ、でもアカリのブラジャーカワイかっ…」
『おい、リエーフいっぺん死んでこい』
続く灰羽も、ドスの効いた声で撃沈。
朱里さんは相当怒っているようだ。それはそうか、下着を見られたのだから。しかも複数の異性に。
男子の俺でもパンツを見られるのは嫌だ。木兎さんなら見せびらかしかねないが…女子が下着を見られるのは、とてつもなく嫌だろう。
「朱里さん、そんな濡れたままだと、夏場とはいえ風邪をひきますよ。着替えに行きましょう」
『うぅ~、あかぁしさぁん!』
しゃがんで目線を合わせると、朱里さんは俺に抱き付いてきた。俺のTシャツを両手でぎゅっと握り、頭をぐりぐりと胸元に押し付けてくる。
ヤバい…可愛すぎるだろ、コレ。
俺は一人、理性と戦っていた。
【赤葦 side Fin.】