第2章 音駒の彼ら。
次の日。
朝練に出た私は昨日より憂鬱だった。
…というのも、こっち来てからお世話になっているおばさんが親戚のいる田舎に引っ越すことになり、借りているマンションを引き払ってしまうそうなのだ。
さらに、おばさんは"翔くんママに朱里ちゃんのことお願いしてみるね"とも言っていた。つまり、翔ちゃん家に居候することになりそうでならなさそうで…
何故このタイミング!?
何となーく翔ちゃんと顔を合わせにくいなーとか思っていた矢先に…
何故このタイミング!?
負のオーラを放ちながら参加していたせいなのか、潔子さんやスガさんに何度も心配された。その度に笑顔を取り繕ったが、心の中はそうもいかなかった。
朝練が終わり各自解散になったとき、私は翔ちゃんを呼び止めた。
『あのね、ちょっと、ちょっとだよ、話があるんだけど…』
「何?」
頭の上に疑問符を浮かべながら翔ちゃんが訊いた。
『そのぅ…暫く泊めてくんない?』
「はぁっ!?」
私の爆弾発言に真っ先に反応したのは、何故か影山くんだった。周りを見れば月島くんや目が点になってる大地さんとスガさんもいたりするみたい。
あれ?
みんな聞いてたり…する?
その後、私がみんなに問い詰められたのは至極当然のことと言えるだろう。
『………というワケでして。どうしよう翔ちゃん!?』
「アカリ落ち着けって!」
突然訪れた危機に私がパニクってると、翔ちゃんに宥められた。いつもは逆の立場だから何か新鮮かも。どうしようを連発する私に翔ちゃんはう~んと唸りながら言った。
「そのおばさん?が引っ越すのっていつ?」
『えっと…五月中には引っ越すみたい』
「分かった。何とかしよう!」
腰に手を当て胸を張った翔ちゃんはいつもより二倍も三倍も頼もしく見えた。