第11章 夏休み合宿~二日目~。
"心の奥底には 鍵をかけた扉
「馬鹿げてる」そう言い聞かせては
ノックの音を無視した
「変わらない」と諦めて
佇む時計の針に急かされる
夢ならば喜んで
「星に願い事を」と真面目な顔で"
心の奥にしまい込んでいる"何か"が、蛍くんにもあるんだろうな。
間奏をフンフンと鼻で唄い、曲は二番に差し掛かった。
"チクタク働け馬鹿げた兵士
ガッタン ガッタン ランランラ
取捨選択 よーいどん
気が付けば真っ黒屑のよう
朝と夜とが入れ替わろうと
マ ノ マ ノ ランランラ
誰も気にしない
貪欲に数字を追っかけた
扉の向こうから 微かに漏れる声
「仕方ない」と膝立てて
部屋の隅っこで小さく罵声を吐く
何処でもいい 連れ出して
王子様なんて 来るはずもなく"
柄にもなくスキップをしながら、カゴを運ぶ。洗濯機にガッと突っ込んで、スイッチオン、後は放置。寝る前に干したら朝には乾くかな~。
"「こんばんは おはようございます」
扉の向こうで誰かが言う
「大丈夫鍵は開けずとも
ここからアナタに届くでしょ」
そんな話は聞きたくない
聞きたくない 嫌 聞きたくない
ねぇねぇ何処にも行かないで
側にいて 話を聞かせて"
きっと、この歌の少女は現実と夢の間で悩んでいるんだと思う。到底叶いそうにない夢と、同じことのくりかえしの現実と。
馬鹿げてるんだって分かってるけど、心の隅には夢があって欲しい。それが原動力になるのだから、と…
"「下らない」と嘘吐いて
それでも誰かに気付いて欲しくて
冷たくて触れられない
いつまで経っても鍵は開けられずに
棺の中 働いて
「それでもまあ」なんて言いたくはないわ
針は回る いつまでも
優しいノックの音で泣いてしまう"