第11章 夏休み合宿~二日目~。
あれだけスイカを二つ食べたのに、リエーフも翔ちゃんもお昼ご飯は変わらぬ量を食べる。食欲すごっ!
『あれ、二人ともハンバーグは?』
今日のお昼ご飯はハンバーグ。メインディッシュのハズなのに、二人のお皿にはハンバーグがなかった。まさか、もう食べた、なんてことはないし。
「あー…サーブ練習でハンバーグ賭けたんだよ。そしたら負けて、田中先輩が…」
ちらりと翔ちゃんが田中先輩を見たので、私も目線を移した。田中先輩は縁下先輩や西谷先輩と楽しそうに話しているが、そのお皿には三つのハンバーグ。
『リエーフもあげちゃったの!?』
「日向が勝手に賭けたんだよ」
リエーフ、ドンマイ!
言ってるそばからリエーフのお腹が"ぐぎゅるるるるる"と音をたてた。隣に座るクロがお前食ってんのになんで腹鳴るんだよ、とげらげら笑っている。
あんなに頑張っているのにお肉がないなんて可哀想じゃないか!
そう思った私は、手を付けていなかったハンバーグを箸で二つに分けた。そして、それぞれを翔ちゃんとリエーフのご飯の上に載せてあげる。
『はい、半分ずつだけどあげる』
「えっ!?」
「アカリっいいのか!?」
『いいよ。だから午後の試合頑張ってね!』
にこっ、と笑って言うと、二人はアザッス!と言ってハンバーグとご飯を口いっぱいに掻き込んだ。
「ねーねー、俺の分はー?」
『あ、クロの分ない。代わりにコレ、はい』
私がクロのお皿に載せたのは、ミニトマト。
「キライなヤツじゃねーかよ!」
『だって仕方無いでしょ!トマトの青臭い感じ、苦手なんだもん!』
「おまっ、トマトに謝れ!」
『やだ!』
「失礼だろ、チービ!」
『翔ちゃんよりおっきいもんね!』
「おれを巻き込むなよ!」
小学生かとつっこみたくなるような低レベルな口喧嘩。一頻り悪口を言い合った後、クロと顔を見合わせてぷっと吹き出した。そして、二人同時に笑いだす。
「なんか、音駒の主将とアカリって仲良しなんだな!」
翔ちゃんに言われて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。俯くと、クロがやーいやーいとか言ってきたから、迷わずテーブルの下で思いっきり足をふんずけてやった。