第11章 夏休み合宿~二日目~。
「朱里ちゃん、ちょっといいかな?」
潔子さんに呼ばれたのは、太陽が昇り、いよいよ暑くなり始めたお昼前だった。
「森然高校の父兄の方からスイカの差し入れがあって。マネージャー総出で切らなくちゃいけないの」
『分かりました!日頃の恨みを込めてざっくざっく斬っていきます!』
「恨みは込めないでね。あと、"斬る"の字が違うから」
腕まくりをしてやる気をアピールするも、さらりと返されてしまった。うむ、難しい…←
調理室をお借りして、ざっくざっくと斬っていく、ならぬ、切っていく。
「そういえば~、朱里ちゃんは何か進展ありました~?」
ざくりとスイカを切りながら訊ねたのは、雪絵さんだった。まだ覚えてたんだ。女子の恋愛への興味心、恐るべし。
『いやぁ特には…あ、でもクロにコクられましたよ。だいぶ適当でしたけどね』
アハハ…と苦笑いで言うと、キャーとピンク色の声が部屋に響いた。そのほとんどが黒尾くんやるなぁとか、攻めますねぇなどと、囃すものだったけど。
「それで、誰にするの?選び放題だぞ!」
『いやいや、かおりさん、バイキングじゃないんですから!』
食べ放題だぞ!みたいに言わないでください!
「それよりも、早く持っていきません?」
森然のマネさん、真子さんがおずおずと言ったので、この話は一旦おしまいに。
それから体育館までは、久し振りのガールズトークに花を咲かせ、きゃっきゃとはしゃぎながらスイカを持っていったのでした。