第10章 夏休み合宿~一日目~。
そして、日が暮れる頃には、烏野は全員死にかけていた(嘘)。
「見事全敗」
「いっそ清々しいな…」
ぐったりと床に突っ伏した大地さんとスガさんがぼやいた。そう、烏野は全敗。
ちなみに、試合に負けたときのペナルティは、"森然限定、さわやか裏山深緑坂道ダッシュ"。足下が悪く勾配の急な山道を頂上まで走り、戻ってくる。平地を走るのに比べて遥かに体力を消耗するのだ。
そんなわけで、ぐったりしているのですよ。
でも、そんな疲れをものともせずに、自主練に向かう。タオルの後片付けをしながら、みんなの動きを見ていた。シンクロ攻撃の研究をしたり、サーブの練習など、残る人がほとんどのようだ。
そんな中で、蛍くんただ一人が体育館から出ようとしていた。
『けーいくーん!』
「…何?」
怠そうに振り返った蛍くんに、私は思いきって訊いてみた。
『蛍くんは練習、しないの?』
すると、蛍くんは何言ってるの、とでも言いたげな顔で、私を突き放した。
「練習なんて嫌って程やってるじゃん。ガムシャラにやればいいってモンじゃないでしょ」
『…あ、そうだ、ね』
くるりと踵を返して去る蛍くんを、引き留めることは出来なかった。
って、しまった!
クロにサポーターとってって言われてたんだ!
なにタオル片付けてるんだよ!
ひゃ~怒られるぅ!とか思いつつ、ぽいっと放り投げられたのであろうクロのサポーターを手に、第三体育館に向かった。