第9章 夏休み合宿~出発~。
それから合宿までの日々は、まあ忙しかった。部活が終わると同時にそれぞれが個人で練習を始める。
旭さんはジャンプサーブ、西谷先輩はジャンプトス。スガさんたちはシンクロ攻撃の研究。そして、翔ちゃんは烏養元監督のお家で誰とでもファーストテンポ。山口くんは嶋田さんとジャンプフローターサーブの練習。
私はというと…
『影山くーん、いくよー!』
「おう」
飛雄くんと新速攻用のトスの練習。ネット際に空のペットボトルを等間隔で並べる。私がボールを投げて、飛雄くんがトスをし、ペットボトルを倒す、って練習なんだけど…
これがなかなか難しい。あと少しのところでボールがペットボトルに当たらなかったり。やっぱり、一つの場所に的確にトスをするのは難しいみたい。
なかなか練習の成果がでないまま、とうとう夏休み合宿の前日となった。
いつものように練習を終え、ぽつりぽつりと帰りだす部員たち。私たちが最後みたい。
『飛雄くん、夜中に出発だしこの辺で終わりにしておこっか?』
「ああ、付き合わせて悪かったな」
『ううん、少しでも力になれたならいいの』
にっこりと笑うと、飛雄くんも微笑んだ。
遅くまで付き合わせたし、送ってくれるという影山くんに甘えて、一緒に帰ることに。さすがに夏とはいえ、夜道を一人出歩くのは危ないからね。
それに、バレーの話やクラスでの話とか他愛のない話をする時間は結構好きだ。
『今度の合宿は森然高校だから、埼玉かな』
「前は梟谷だったから、東京なのか」
『会場は各校持ち回りみたいだからね、次辺りは音駒とかかな~』
そんな話をしていると、私のマンションに着いた。
『送ってくれてありがとう』
「ああ、じゃあ後で」
『またね!』
飛雄くんと別れ、階段を駆け上がる。エレベーターよりも、こっちの方が好き。
さぁ、おにぎり作らなくっちゃ!
明日からの合宿に一番浮かれているのは、私だったのかもしれない。