第9章 夏休み合宿~出発~。
シャワーを浴びて、晩ご飯を済ませて、すぐさまおにぎりを作る。
「またおにぎり作んの?」
『うん。前回好評だったから』
兄さんも強制参加だからね!と言うと、兄さんは口では文句を言いながらも、手伝ってくれる。ご飯は帰ってくるのが早かった方が作る、ってルールがあるから、二人ともある程度の料理はできる。兄さんも手際よくおにぎりを作っていく。
『あ、シラスおにぎりは三角ね。鮭とかわかめなら普通に』
「リョーカイ♪」
二人で黙々と握る。そして、四合のご飯はあっという間におにぎりに変身。
『兄さんありがと。また夜起こしてね』
「おー。前と一緒か?」
『そ。ちゃーんと起こしてよぉ?』
「…努力する!」
一瞬間があったけど、スルーしておこう。
それから仮眠をとって、兄さんは時間通りに起こしてくれた。車も出してくれて、助かった。おにぎりと自分の荷物とたくさんだったからね。
学校に着くと、ちらほらと部員がバスに乗り込むところだった。
『兄さん助かりました』
「ほいほい。んじゃー、気を付けてな」
『はーい。いってきまーす!』
兄さんに手を振ってバスに乗り込む。どこに座ろうか迷っていると、誰かに腕を引っ張られた。
「朱里はここね」
『うっわ!って、け、蛍くん』
どうやら私を引っ張ったのは、蛍くんだったみたい。蛍くんに後ろから抱きしめられ、身長差がある私は、すっぽりと腕の中に収まってしまう。
後ろでイチャコラしてる!とか、不埒な!とか叫んでる2年生二人は、スルーするとして。
『蛍くん、ちょっと恥ずかしいかな///』
「放して欲しいならお願いして」
『蛍くん腕を放して?』
そう言って後ろを振り向くと、ニヤりと笑う蛍くんがいた。
「じゃ、合宿中に言うこと聞いてよ?」
『う…一個だけなら』
「三つ」
『一個!』
「朱里…?」
『…三つの方がいいかなぁ!』
ええい、なるようになれ!
半分やけになって言うと、満足そうな笑みを浮かべた蛍くんと目があった。
程なくして解放してくれたけど、やっぱり合宿不安だ…
走り出したバスは、私たちを乗せて東北自動車道を南下する。長くて短い合宿は、もうすぐだ。