第9章 夏休み合宿~出発~。
そして放課後。
兄さんのお手伝いで、"ちびっこバレーボール教室"っていうのに来ている。兄さんがボランティアで出るとかなんとか。
動きやすい格好で来いよ、と言っていたので、学校のジャージを着てきた。中には水色のTシャツ、有名なスポーツメーカーのロゴが白く刻まれている。
暑いなぁとか思っていると…
「あれ、朱里!」
『え、あ、徹さん!?』
どこかで聞いた声、と思ったら徹さんがいた。足には小学生くらいかな、男の子がしがみついている。
『え、徹さんのお子さん…』
「なワケないでしょ!甥っ子!」
ああ、甥っ子か。
隠し子かと思った←
「朱里ちゃん、声に出てるよ!」
『えぇ、それは失礼しましたぁ』
「失礼と思ってないだろ…」
「徹、また新しいカノジョ?」
徹さんを呼び捨てにしたのは、足にしがみつく男の子。
『違うよ、こんな人が私の彼氏なわけない』
「やっぱりそうだよな。それより、徹はカノジョにフラレたばっかりだし」
あ、意外、彼女いたんだ。
「た~け~る~!!!」
秘密だったのか、暴露されて男の子の頭をぐりぐりする徹さん。
「お姉ちゃん誰、徹の知り合い?」
『知り合い…なのかな?日向朱里っていうの、よろしくね』
しゃがんで目線を合わせると、男の子はにっかりと笑った。
「及川猛、よろしく!」
男の子、猛くんは徹さんにサーブを教えてもらいたいようで、しがみついたまま離れない。
「徹ーサーブ!」
「及川さんは忙しいの」
「カノジョいないから暇なくせに」
『猛くん、お姉ちゃん教えてあげよっか?』
私が提案すると、猛くんは目を輝かせて大きく何度も頷いた。
『…というわけで、猛くんお借りしますね』
「待って待って、及川さんも行くから!」
その場を去ろうとすると、徹さんがぎゃーすか言いながらついてきたので、三人で移動することに。
あれ、なんでこうなったんだっけ?