第7章 トーキョー遠征。
くっくっくっと蛍くんは笑いながら言った。
「ていうか何、今の声?本当に色気がないね」
『ううううるさいっ///仕方ないでしょおっ耳くすぐったかったんだから!』
そう弁解すると、そんな顔で言われても説得力ないよと言われ、私はますます赤くなった。
「月島ぁ!何してやがるっ!?」
「あ、え、おっ朱里!どうした!?」
『翔ちゃんっ影山くんっ!もおぉぉぉ!』
なんでよりによってあの二人が見てるかな…
どうやら、私と蛍くんの一連のやり取りは二人に見られていたらしい。
がっくりと項垂れる私と、月島とアカリがキスしてたと吹聴する翔ちゃんと影山くんを見比べて、蛍くんは思いっきり笑った。それこそ、思いっきり。
お陰で要らぬ疑いはかけられるし、スガさんの笑顔がなんか黒いし、山口くんはおろおろするし、学校に着くまでの時間が正に地獄だった。
学校に着くと、一旦体育館に集合して、ミーティングをすることになった。明日の月曜日は整備点検のため、体育館が使えなくなるらしい。
「…えー、ということで、明日の部活は休みになりました」
武田先生の発表に、2年生二人が踊り出す。そして、田中先輩は脱ぎ出す。何故!?縁下先輩がどやしながら、今日はお開きになった。終いに、烏養コーチがしっかりと休むようにと、釘を打っていた。
翔ちゃんに帰ろう、と言おうとしたとき、翔ちゃんの方が一歩早く影山くんに声をかけた。
「影山、トス、上げてくれ」
「…おう」
『わ、私も手伝うよ!』
入り口脇に荷物を置いて、私も慌てて準備に加わった。支柱を立ててネットを張って、ボールを運ぶ。
「朱里、投げてくれ」
『うん。いくよ、えいっ』
どことなく緊張感が漂う中、私は影山くんにボールを投げた。翔ちゃんは既に走り出し、踏み切る直前。影山くんがボールに触れて、トス。
だが、ボールは虚しく床に落ちた。