第7章 トーキョー遠征。
食堂に着くと、ほとんどの人が朝ご飯を食べている最中だった。
『おはようございます!すいません、すっかりみんなとバレーしちゃってて…』
朝食作りに参加できなかったことを謝ると、いいからいいから、とかおりさんが手を振った。
「ごめんね、うちの木兎が」
『いえ!楽しかったですし、木兎さんとバレーしてると、元気が出ますね』
「ふふ、そこだけが取り柄だからね~」
さりげなく否定した雪絵さんに木兎さんがガーンと効果音つきでショボくれた。
「木兎さん、朝からショボくれないでください」
赤葦さんがうんざりした様子なので、私も慌ててフォローをした。
『ごめんなさいっ、木兎さんは元気で明るくて、うんと、あの、とっても強いです!』
「ホンと!?」
『はい!私の下手っぴなトスでもあんなに綺麗に決めてくれて…』
「ヘイヘイヘーイ!やっぱ俺最強!」
木兎さん、驚異の早さで、はい復活。
あ、五七五になってた。
それから、みんなで楽しく朝ご飯を食べた。
「朱里さんはセッターだったんですか」
『う~ん…中学の頃監督にいろいろポジションやらされたけど、一番しっくり来るのはセッターなのかな』
赤葦さんが訊いてきたから少し考えてから答えた。アタッカーやらリベロやら、あれもこれもやったけど、一番楽しかったのはセッターだった。
「あんなに上手いのに、部活入ってないんだな」
木兎さんの何気ない質問に、ドキリとした。
『中学最後の大会で無理しちゃって…数年は激しい運動禁止だーってお医者さんに言われたんです』
「へー。じゃあさっき動いてたのよかったのか!?」
急に焦り出す木兎さんに、クロが説明。
「多少はいいんだろ。な?」
『うん。やり過ぎると足首が痛むから…』
どよ~んとした空気がテーブルを取り囲む。う、気まずい…
『でも、あの、今はマネージャーやってるから。それに、みんながバレーしているのを見るのが、すごく嬉しくて、楽しいんです』
烏野バレー部は、私の誇りだ。
そう思えるチームに巡り会えたことが、とても嬉しいのだ。その後、私は上機嫌で、普段の何倍も動き回った。