第7章 トーキョー遠征。
どうにか流れる涙を止めて、ぐしぐしと目元を擦った。
「アカリ大丈夫?」
『うん、へーき。ありがと、翔ちゃん』
早くやろうと私が言うと、翔ちゃんはにかりと笑って、ボールを手にした。
翔ちゃんのサーブは、ネットをかすってコートに入った。クロがフライングレシーブを決め、赤葦さんがトス。そしてリエーフがスパイクを決めた。
初めてとは思えないくらいの鮮やかな連携に、私は舌を巻いた。三人ともコンビネーションがうまい。
『切り替え切り替え、次いこー!』
「「ウッス!」」
赤葦さんからのサーブを、翔ちゃんがぽこっと変な音をたててレシーブ。苦手なんだなぁ、レシーブするの。後で練習内容に入れておこう。
そんなことを考えながらトス。トンッと軽い音をたてて、ボールは飛んだ。
『よっ』
トスの先には助走から既に踏み切っている翔ちゃん。影山くん程上手くはないけど、私たちの初めての速攻は、綺麗に決まった。
「やったー!すごい、今の見た?」
『見た見た!ビュッてなって、バンって!』
「結局お前ら似た者同士じゃねーか」
やったやったと跳び跳ねて喜ぶ私たちを、クロが苦笑いする。赤葦さんも似たような反応。木兎さんは賞賛を贈ってくれて、リエーフは止められなかったからか、くそー!と悔しそうに地団駄を踏んでいた。
それから30分程度動くと、鈍っていた体はすっかり疲れきっていた。
「朱里さん、大丈夫ッスか?」
『赤葦さん、はぁ、だっ、大丈夫です…』
「全然大丈夫じゃねーだろ。切り上げて朝飯でも食いに行くか」
『えークロのけちー、じゃあ、あと一本だけ、翔ちゃんにトスしたいな』
「へーへー。お好きにドーゾ」
お好きにどうぞと言われたので、言葉通り好きにさせてもらいます。翔ちゃんにトスを上げて、一本決まったところでお開き。
水分補給をして、タオルで汗を拭いて、私たちは食堂に向かった。歩きながら、話題はやっぱりバレーのことだった。