第7章 トーキョー遠征。
チーム分けが終わって、ネットを挟んで向かい合ってるんだけど…
『これ、明らかに不公平じゃ…?』
「いーんだよ」
クロにばっさり切り捨てられた。
いやいや、おかしいってこのチーム!
クロチームはクロとリエーフと赤葦さん。私のチームは木兎さんと翔ちゃんと私。
身長差、身長差!
しかも木兎さんと赤葦さん離しちゃったよ。
『大丈夫かなぁ…』
「アカリのトスだ!やっほー!」
『しばらく振りだけど頑張るね』
「ヘイヘイヘーイ!楽に行こうぜ楽に!」
緊張する私を、木兎さんが励ましてくれた。数回深呼吸をすると、落ち着いてきた。
サーブはクロから。初っぱなからサイドラインきりっきりに打ってくる。木兎さんが上げたので、落下点に走る。
『木兎さんっお願いします!』
指先で丁寧にボールを扱う。
ふわり…とボールが宙を舞った。
そして、木兎さんストレートを決めた。
ズドッと重い音が体育館の空気を震わせる。
『…っは、やった…』
私は自分の手を見つめた。そして何回か握ったり開いたりする。よかった、出来た。
「すげー!あかーしより打ちやすい!」
「ちょっと傷つくんでやめてくれますか」
二人の声が、翔ちゃんの歓声が耳に入らないくらい、私は感動していた。
まだ、
出来た。
トス、
上げられた。
「今のすごかったなーって、どーした?」
「アカリッ!?」
『えっ?』
「泣いてる…」
『え、あっ』
翔ちゃんに言われて、初めて自分が泣いていることに気づいた。つぅっと頬を伝う涙を袖でぬぐった。それでも、一度流れ出した涙は止まらない。
『ごめっ、なさい。グスッ…うれ、しくて』
嗚咽で途切れ途切れになりながら、へらりと笑ってみせた。
本当は、薄々気がついてた。みんなのプレーを見る度、体の芯が疼いてた。ボールに触りたくて、堪らなかった。
久し振りにボールに触れてわかった。
やっぱり、バレーが、好きだ。
この感覚を、
この感動を、
思い出せたのは
彼らのお陰。
だから笑おう。
翔ちゃんが、クロが、研磨が、
みんなが好きだと言ってくれた笑顔で。
精いっぱいの感謝を伝えよう。
涙でぐしゃぐしゃの顔で、それでも私は今できる一番の笑顔で笑った。
『ありがとうっ!!』