第7章 トーキョー遠征。
クロは滅多なことじゃないと、本気で怒らない。クロが激怒したのを見たのは、数える程しかない。でも、今クロが纏っている空気は、それに近しいものだった。
「いい加減にしろよ、リエーフ」
「なんで?アカリはクロさんのものじゃないですよね、違いますか?」
早口で捲し立てるリエーフに、クロも言い返す。
「だからといって、お前のものじゃねー」
「俺はちゃんと言いましたよ、好きって」
「言っとくけどな、俺の方が付き合いは長いんだからな」
「そんなのどうでもいいです。それより…」
『二人とも…夜だから静かにしようか』
だんだんとヒートアップする二人の口喧嘩に、笑顔で終止符を打った。私が怒っているのを悟ったのか、クロもリエーフも口をつぐんだ。
ちなみに、こうしている間にも研磨はスマホでラスボス戦中。夜久さんと海さんは爆睡中なわけです。他のみんな、ほとんどがもうとうとしてるか、寝ているか。それかスマホか本。
『起こしちゃ悪いから。明日も早いでしょ』
「「…はーい」」
『よしよし』
素直に静かになった二人を、背伸びして撫でてあげた。クロはお風呂であのヒドイ寝癖がとれて、さらっさら。リエーフも銀髪が綺麗だった。
リエーフは目を細めて猫みたいになってる。クロはというと、嬉しそうに私を見下ろしていた。なんなんだろう、座っているのにこの身長差って。
私が手を下ろすと、クロが真剣な面持ちで見つめてきた。
『な、んでしょうか?』
「やっぱ言うわ。俺、中学の頃からアカリのこと好きだったんだよな」
『へぇ………えっ!?///』
「いや、マジで」
嘘でしょ!?
だってクロ普通に彼女とかいたじゃん。
と、私の心中を察したかのように、クロが渋い顔をしながら言った。
「全部向こうからコクったくせに、全部向こうからフられました。しかもみんな揃って、"他の子が好きなんでしょ"だとよ」
唖然。
何その新情報。ていうか、このタイミングで言いますかね、普通!
なんとも言えずに黙っていると、クロが私の頭をポンポンと叩いた。
「ま、返事はいつでもいいからさ」
「俺も!明日からガンガンアピールする!」
『うん…ごめんね』
謝ると、二人とも気にするな、と笑ってくれた。その後、二人に送られて部屋に戻ると、やっぱり質問攻めにされた。