第7章 トーキョー遠征。
リエーフから離れ正面から向き合って、ノートとシャーペンを構えた。
『それで、何㎝、何㎏、何が好き?』
「この前測ったら194.1だった。79.7㎏。好きな食べ物はおいなりさん」
『ふむふむ。じゃあ、最近の悩みは?』
「先輩が変なあだ名をつけようとしてくる」
ノートに書きながら、リエーフが拗ねたような口調だったので、ぷっと笑った。すると、リエーフは伸ばした手足をばたばたと動かした。
「だってそうなんだもん」
『ふふっ、"だもん"ってリエーフが使うとなんかかわいいね』
子供みたいにぶーとふくれるリエーフのほっぺをつっつくと、その腕を掴まれた。ぐいっとリエーフに引き寄せられ、気がついたら腕の中だった。
「わー、アカリちっさい!」
『翔ちゃんよりおっきいもん』
「アカリの"もん"もカワイイ」
『ありがとう…って、じゃなくて放して!』
「んーヤダ。だって放したらアカリはどっか行っちゃうだろ?クロさんとか研磨さんとか」
私はうっ…と言葉に詰まった。実際にリエーフから避難するのに、誰のところに行くか考えていたから。
「俺さ、アカリのことスゲー好き」
『えっ///でも、今日会ったばっかりで…』
「そーゆーの、カンケーないから。俺が好きだと思ったら好きなの」
どこまでも真っ直ぐなリエーフに、言葉を失った。こんなド直球なところは、翔ちゃんに近いのかもしれない。
私はしばらく、リエーフの腕の中でぼへーとしていた。伝わるリエーフの一定のリズムの鼓動が、疲れている私の眠気を誘う。
「あったかい…アカリ、好きだよ」
『う…ん……』
あー、ダメだ、眠たい。
口数が少なくなった私を、心配したのかリエーフが耳元で言った。
「アカリ?どうし…」
「おいリエーフ、離れろ」
リエーフの言葉をクロが遮ったかと思うと、今度はクロに捕まった。
誰かぁ、寝かせてください。