第7章 トーキョー遠征。
お風呂から上がった私は、急いでTシャツとショートパンツに着替えた。何分人数が多いので、早く空けないと次が入れない。
髪を乾かす時間さえ勿体ないので、がーっと拭いて、首からタオルをかけておく。髪を縛ろうとして、手首にヘアゴムがないのに気付いた。シャワーのときに置いてきたんだ。
「先に行ってるよ」
『はーい、私もすぐ行きまーす!』
潔子さんが声をかけてくれたので、返事をして浴場に向かった。私が使ったシャワーの近くに、紺色のヘアゴムが落ちていた。
『よかった、あったや』
手首にはめて、着替えた服を抱えてドアを開けると、そこには翔ちゃんと影山くん、蛍くんたち烏野のみんながいた。
『あっ、ごめんね、待たせちゃった』
「おうっ///」
心なしか、影山くんの顔が赤い気がした。他のみんなも似たようなもので、スガさんは口許を手で隠してるし、山口くんはフイと顔を逸らしている。
みんながそんな反応の中で、蛍くんだけが私をじーっと見ていた。
『え、なんか付いてる、かな?』
直視されて恥ずかしくなって、ごまかすように髪をいじった。すると、どこからか影山くんの手が伸びてきて、私のタオルをとった。
『タオルっ!』
「こんなに濡れてたら風邪ひくだろ」
『うわっ、わっわっわっ///』
影山くんがタオルで頭をわしゃわしゃしてきた。咄嗟に掴んだ手が私のと違ってちょっとごつごつしてて、男子の手だなぁとか思って、キュンッとした。
「おやおや、影山くん?」
「日向うっせーボゲェ!」
「おれなんも言ってないのに…」
しょげる翔ちゃんをよそに、掴んだ私の手を退けて、影山くんは私の頭を拭き続ける。
『もういいってば…影山くんっ!』
大きい声を出して、タオルの間から睨むと、やっぱり影山くんは赤い顔だった。
「わ、悪ぃ…」
『影山くんこそ、汗が引いたら水分も体温もとられるんだから、気を付けてね』
「おう」
『じゃあ、みんなもお風呂ごゆっくり。おやすみなさ~い』
手を振ると、3年生ズはおやすみと返してくれた。翔ちゃんも両手をぶんぶん振ってた。マネージャーの部屋に戻ろうかな、と思ったら、用を思い出したので、くるっと向きを変えた。
目指すは音駒の部屋!
私はさっきとは打って変わって、足取り軽く歩き出した。