第7章 トーキョー遠征。
ガタンと立ち上がったクロは、すごい驚いた顔で質問攻めにしてきた。テーブルに座るみんなも然り。
「は、俺聞いてないけど?」
『ハッ、張本人がよく言うわ』
「「「「えぇっ!?」」」」
「はぁっ!?」
いや、待って、なんで覚えてないのさ。
なんで一番クロがビックリしてるの!?
「え、えっアカリそうなの?」
『うん』
翔ちゃんがおどおどしながら訊いてきた。
「マジでか…」
『うん』
影山くんはひきつった笑みで呟いた。
「僕が最初じゃなかったんだ…」
『うん。…って、ちょっと!』
蛍くんなんかさらっと暴露混じってる!
「オイ、俺いつ手ぇ出したよ?」
「小学生のときでしょ」
『うん。研磨アタリ』
マジかよー!と頭を抱えるクロはスルー。だいたいにして、研磨が覚えてる時点でおかしいんだよね。
『たしか4年生のときかな。その頃兄さんは高校生で、いろいろ仕込まれてたんだよね。その兄さんの偏った恋愛話の中でキスは甘いとかなんとかって聞いたんだよね』
「それで…俺がヤったと?」
『そ。放課後、クロの家に遊びに行ったときにその話をしたら、じゃあしてみる?的な雰囲気になって、そのまま…』
あの日のことは今でも鮮明に覚えてる。夏みたいに暑い春だった。ベッドに腰かけた私にそっとクロが近付いて、お互いの唇が一瞬だけ触れた。
結局、私が甘くないよ、クロはだな、と返してその後は何事もなかったんだけど。
それでも、まだ覚えてる。
初めてだったから。