第7章 トーキョー遠征。
時は過ぎて晩ご飯時。後から来た翔ちゃんも、すっかりリエーフたちと仲良くなっていた。ただ、さっきのことがあるのか、影山くんとはぎすぎすした感じだった。
今日の晩ご飯は合宿定番のカレーライス。マネージャー6人と手の空いている先生などが手伝ってくれて、膨大な量のご飯を作った。
「「「「「いただきまーす!」」」」」
いただきますの大合唱と、食器のふれ合う音が食道いっぱいに響いた。それから談笑する声と、美味しいと喜ぶ声。うまいと一言聞こえるだけで、作ったかいがあったと思える。
『蛍くーん』
「何、朱里?」
『サラダのミニトマトあげよっか?』
「ふーん、嫌いなんだ」
『違う違う、成長期の君には是非ともリコピンをたくさん摂取して欲しくて…』
「リコピンって美容にいいんじゃないの?」
『でも、あげるよ。育ち盛りなんだし…』
「僕は要らないから」
なんとか苦手なトマトを食べてもらおうとするも、蛍くんに一蹴された。その様子を、隣に座るクロがケラケラ笑いながら見ていた。
「クックックッ…お前ら何、付き合ってんの?もしかしてキスも済ませた?ファーストキス?くー、青春だねぇ」
見当外れにも程があるセリフに、私はむせてしまった。ごほごほと咳をする私に、親切な研磨はお水をくれた。ありがとう、研磨。
『ちょっと待ってよ、今の会話のどこをどう解釈したらそうなるの?』
「え、だって名前呼びだった。違うの?」
『そんなこと言ったらね、走ともリエーフとも同じことが言えますけど?』
「黒尾さん、誤解を招く言い方はやめてください。なんで僕がこんなちんちくりんと付き合わなきゃいけないワケ」
ち、ちんちくりんだとぉ!?
人に告白しといてなんなのよ!
この意地っ張りのアマノジャクめ!!
口に出すと後でどんな目に遭うか知ってるから、心の中で吼えておく。
『クロ、蛍くんと付き合うとかあり得ないから。それとね、私はちんちくりんじゃない』
「ふーん、キスは否定しないんだね」
ニヤニヤしながら揚げ足をとってくる。腹立つわぁこの顔!
『キスは勿論してません。それにファーストキスならもう終わったし』
「「「「「えぇっ!?」」」」」
あ、墓穴掘った気がする…