第7章 トーキョー遠征。
翔ちゃんと影山くんが入っての、初めての音駒との試合。
こっち(音駒サイド)には、新戦力のリエーフがいるし、翔ちゃんがどう戦ってくるのかとっても楽しみ。
試合早々にして、リエーフが変人速攻をブロックしたときは、おおっ?と思った。悔しがる翔ちゃんを、リエーフはビッ!とネット越しに挑発。
音駒3-烏野2で、タイムアウト。研磨は変人速攻がブロックされたので、普通の速攻が増えると予想。トスがどこに上がるか見てから跳ぶ、リードブロックに作戦変更。
そして予想通り、影山くんは普通の速攻を増やしてきた。烏養コーチのアドバイスもあったのか、翔ちゃんではなく、レフトの旭さんや田中先輩にトスが集まる。
猛虎さんのスパイクを影山くんが拾い、大地さんが上げる。ちょっと短めのそれを打つのは、エースの旭さん。
誰もがそう思ったとき、
それは起きた。
手を大きく振りかぶった旭さんに、
翔ちゃんが突っ込んでいった。
どっふと音をたててぶつかり、翔ちゃんが床に転がる。そして、ボールも烏野コートに落ちた。
挙動不審になっている旭さんに、翔ちゃんは見事なまでの土下座。烏養コーチが翔ちゃんを叱り飛ばしているけど、そんなことはどうでもいい。
私は見てしまった。
『翔ちゃん、笑ってた…』
エースの旭さんに上がったトスを、翔ちゃんが奪いに行った。翔ちゃんは笑ってた。
笑顔で、ボールをとりに行ったんだ。
その事実に、私は背筋がぞくりと震え、鳥肌がたった。
そして、翔ちゃんが影山くんに言った。
「影山、ぎゅん!の方の速攻、おれ、目え瞑んのやめる」