第7章 トーキョー遠征。
コート横にあるベンチには猫又監督と直井コーチが座っていた。私に気づくと、猫又監督はにこにこして手を振った。
『こんにちは猫又さん、直井さん』
「やあ朱里ちゃん、今回も宜しく頼むよ」
『はいっ頑張ります!』
二人の横に座った私は、コートを見て頚を傾げた。走が、いない。代わりにいるのは、すごく背の高い子で、しかとハーフっぽい。
『あの、猫又さん、ちょっとお訊ねしたいんですけど…』
「ん?」
『走が…犬岡くんがいなくて、その代わりに11番の背の高い子が入ってます。11番くんは前回の練習試合のときにはいなかったと思うんですけど…』
「ああ、アイツはうちの新人。五月には部活やってたんだけどね~何分高校からバレーをやり始めた素人だから、お留守番だったんだよ」
『始めたばっかり!?あれで!?』
猫又監督の言葉に、私は耳を疑った。高校で始めたばかりというのは、本当だろうか?
高い身長を生かしたブロック、長い腕を鞭のようにしならせたスパイク。レシーブはまだまだだけど、素材としてはものすごく光っている。
試合が終わって、部員たちがぞろぞろと集まってきた。私はタオルやドリンクを渡しつつ、11番の彼を目で追っていた。
「注目!今回の合宿も烏野からマネージャーを借りてきた。お前らは前回もいたから面識があるだろうが、灰羽は初めてか?」
「ハイッス!」
へー"灰羽くん"って言うんだ。猫又監督に促されて、私は軽く挨拶をした。
『前回に引き続きマネージャーをします、日向朱里です。よろしくお願いします。灰羽くん?は初めまして』
「ハジメマシテ、俺、1年の灰羽リエーフって言います!リエーフって呼んで!」
『わかった、リエーフ。後から来るんだけど、烏野の10番が私のいとこなの。紛らわしいから私のことも名前で呼んで?』
「ヨロシクな、アカリッ!」
そう言ってリエーフはニッと笑った。