第7章 トーキョー遠征。
私がせっせと握ったおにぎりは、あれよという間になくなり、お弁当箱は10分もしない内に空になった。
「いやーうまかった!」
「朱里は料理が得意なんだな!」
『大地さん!ただ握っただけですから…』
「でも、作ってきてくれて嬉しかったぞ」
あんなに作るの大変だったろ?と心配そうに大地さんが言うもんだから、慌てて首を横に振った。
『全然!こんなことでお役に立てるならもっと作ってくればよかったです』
「ははっ、じゃあまた今度頼むな」
ポンポンっと大地さんが頭を、撫でた。なんだかお父さんみたいで泣きそうになったのは私だけの秘密。
その後、バスは順調に進み、東京についたのは、土曜日の午前中だった。
今回の週末合宿の舞台は、東京にある梟谷学園高校。他四つの高校を展開する、私立高校だ。クロと研磨が通う音駒高校は都立らしいけど、梟谷学園グループの一つらしい。
そして、強豪校が集う合宿に、音駒高校の猫又監督のご厚意によって、烏野高校も参加させてもらえるようになったのだ。
無事に梟谷高校に着き、バスを下りると、午前中にも関わらず、暑かった。しかもその暑さが宮城とは比べ物にならない。
『あっつ~』
「うぇい、アカリ」
『おろ?クロだ!研磨ぁー!!』
バスから下りた私たちを迎えてくれたのは、音駒の面々。クロと研磨が声をかけてくれたので、私は満面の笑顔で駆け寄った。
「久し振りだな」
『二ヶ月?って、クロ焼けたんじゃない?』
「ロードワークとかあるしなぁ…」
「アカリ、元気だった?」
『勿論、研磨は?』
「…まあまあ」
いつもと変わらない幼馴染みに、ほっこりと嬉しくなった。研磨と駆け寄ってきた走と歩きながら話していると、大地さんとクロが挨拶をしていた。相変わらず目が笑っていないけど。
体育館に行く前に、借りる教室に荷物を置きに行った。部員とマネージャーは部屋が違うので、研磨たちと別れ、潔子さんと一緒に行った。
東京のマネさんたちはかわいらしいし、とても親切で、すぐ仲良くなれた。
「今はウチと森然が試合中かな~」
「生川と音駒もそろそろですね」
『それは早く見に行かなくては!』
試合と聞いて目を輝かせた私に、マネさんたちは笑った。そして、みんなでワイワイと話しながら、体育館に向かった。