第7章 トーキョー遠征。
目を覚ますと、東の空には太陽が顔を出していた。ちらりと隣を向くと、昨夜と同じように朱里は俺にもたれて寝ていた。
ずっと座っていたから、体が凝ってるな。腕を伸ばしてうーんと唸ると、朱里の頭ががくりと前に倒れた。やべ、腕が引っ掛かっちゃった…
そして、朱里はその弾みに前の座席に頭をごつんと鈍い音をたててぶつけた。
『いっつぅ…』
「悪い、大丈夫か!?」
『へ、スガさん…?』
ぽや~っとした顔で見てくる朱里。目を擦ってふわぁとかわいい欠伸をした。俺は起こしてしまった罪悪感に襲われた。
「ごめんな、まだ寝てたかったろ。もう一眠りするか?東京までもうしばらくあるし…」
『うぅ…大丈夫ですぅ…』
大丈夫だと言いながらも、朱里は頭がゆらゆら揺れている。これ絶対眠たいんじゃん。
朱里が目を閉じて再び寝ようとしたそのとき、場違いな叫び声が車内に響いた。
「龍、見ろ!日の出だぞ!!」
「おう、ノヤ!」
「お前らうるせぇ…」
前の座席の二人を注意しながら、俺はがっくり項垂れた。朱里も眠気が飛んでいったのか、キョトンとした顔で俺を見てくる。
『す、スガさん…あれ、ここって…』
「バスの中。あいつら朝から叫ぶなよ」
俺はため息をついた。他のやつらも起き出したし、原因は絶対にあの叫び声だ。
『わぁ、朝日が綺麗ですね…!』
「だな!」
ニシシと笑うと、朱里も白い歯を見せてニシシと笑った。それから、そうだ!と思い出したように鞄をあさった。
『私、お腹が空くと思っておにぎりたくさん作ったんです。みなさんどうですか?』
寝起きだというのに元気なやつらは、イェーイと歓声をあげた。その中に日向や影山のものがないのに、少し寂しく感じた。
田中と西谷が我先にと手を伸ばし、後ろに座っている大地や旭もどれを食べるか迷っている。
いつもの光景に若干呆れつつも、通路に出ておにぎりとスマイルを配る朱里を、俺は見つめていた。
【菅原 side Fin.】