第7章 トーキョー遠征。
誰かに肩を揺すぶられて、起きると、目の前には兄さんの顔があった。
『わっ!』
「うぉあっ!」
びっくりして起き上がると、危うく兄さんと頭と頭がこっつんこ♪するところだった。ってどこの童謡だ←
『ありがとう、珍しく時間ぴったり』
「時間厳守が、俺のモットーですぅ」
『よく言うよ。試合の後にすぐ迎えに来てって言っておいたのに、30分後に来たじゃん』
「あれは…その、たまたまだっ」
たまたま、そう、偶然だ!と一人でぶつぶつ言ってる兄さんに一言。
『兄さん、独語が多いよ、彼女いないの?』
「うるせー!」
イェーイ、傷口に塩を塗ってやったぜ☆
彼女とはこの前別れたらしい。なんでも、シスコンがバレたそうだ。でもバレるに決まってるじゃないか。だって、スマホの待ち受け画像が妹といとこの写真とか。
「そんなこと言うと送ってやんなーい」
『ごめん、ごめんってば!』
機嫌が悪くなりそうな兄さんをどうにか宥め、エナメルとお弁当箱を持って車に向かう。
「アカリこそ機嫌悪くなーい?」
『別に、平常運転だけど…』
「寝起きだからなぁ…」
アクセルを踏んで車を加速させながら、兄さんがボヤいた。私は寝付きが悪く、寝起きも悪いそうだ。我ながら面倒な人だ。
そうこうしている内に、学校前に到着。既にみんなが集まっていて、私が最後だった。
『兄さん、ありがとう。いってきます』
「気を付けろよー!」
兄さんにぺこっとお辞儀をして、バスに向かって走り出した。
「お、朱里来たか!」
『烏養コーチ、遅くなってすいません』
「いや平気だ。先生、運転頼むぜ」
「任せてください、烏養くん。さ、朱里さんも早く乗ってください」
『はいっ』
バスに乗り込むと、案の定、座席争奪戦中。ただし、潔子さんは一人用の席なので、そんなに苛烈にはなってなかった。
「お、朱里はこっちな!」
『は、はいっ!』
スガさんにぐいぐい引っ張られて、座ったのは窓側の席。隣には当たり前のようにスガさんが座った。
『えっと…?』
「俺がじゃんけんで勝ったの」
ニシシと、笑うスガさんの後ろに、恨めしそうな顔をした西谷先輩と田中先輩が見えた。