第6章 恐怖の期末テスト。
え…何これ。
驚いて目を開けると、蛍くんの顔が目の前にあった。
あ、蛍くんってまつげ長いなぁ…
鼻もスッとしてるし、色白いよね。
じゃなくてっ!
何この状況!?
『………んっ…』
口で息ができなくて、空気を求めて鼻を吸うと、なんか変な声が出た。こんなの変だよ。
いつの間にか、私の後頭部と腰には蛍くんの手が回されていて、全く身動きが出来ない。
苦しくて、早く解放してほしかったから、蛍くんの胸元を両手でトントンと叩いた。そして、ようやく蛍くんが離れた。
『っはぁ…けっ蛍くん、い、まのって///』
「キス、だけど?」
じゃあ、あの柔らかくてあったかいものは蛍くんの唇でっ///
『な、な、なんでっ、こんなことっ』
「フッ、動揺してる?僕が急にこんなことしたから?」
赤くなる私を、からかうように、蛍くんは顔を覗き込んできた。その双眸には悪戯な光が浮かんでいる。
『そりゃ、き、キスとかするからっ///』
「ドキドキしちゃった?」
『うっ///』
図星を言い当てられ、ぐうの音も出ない。でも、蛍くんが言う通り、ドキドキした。だって今、心臓がどっくんどっくん忙しく動いてるから。
蛍くんはじりじりと距離を詰めてくる。少しずつ後退りをするけど、トッと背中が壁に当たった。もう、下がれない。
「だいたいさ、君が無防備過ぎるんだよ。俺だって一応男なんだから警戒ぐらいしたらどうなの?」
『でも、蛍くんだから…』
「キスされてるけど?」
『それはっ///』
恥ずかしくなって目を逸らすと、顔の横にトンット両手をつかれた。これ、壁ドン!?
「ねぇ、俺のこと、ちゃんと見て?」
いつからだろう。蛍くんが"僕"じゃなくて、"俺"って言っていたのは。
おずおずと見上げると、蛍くんは満足気に微笑んでいた。
「さっき俺が言う前に目を開けたでしょ。お仕置きだね?」
『えっ、ちょっと、待って…』
「ダメ」
再び蛍くんの顔が近づいてきて、思わずぎゅっと目を瞑った。蛍くんの吐息を頬に感じたそのとき、バタバタと廊下を走る音が聞こえた。次いで、ツッキー!と叫ぶ声。
「ツッキー、みんな待ってるよー!」
「はぁ、山口…」
明らかに落胆の表情をして、蛍くんは私に背を向けた。