第6章 恐怖の期末テスト。
【影山side】
さっきぶりに朱里の部屋に入った。朱里はちょっと待ってて、と俺の布団を敷いてくれた。
『ごめんね、床で』
「いや、俺は気にしないから」
『そっか~』
「おう」
『………』
「………」
か、会話が続かねー!
「と、とりあえず布団入るか」
『うん』
もそもそと布団に入ると、朱里はタオルケットを頭まですっぽり被った。そして目だけ出してぽつりと言った。
『ごめん、なんか…緊張しちゃって』
えへへ、と朱里はごまかすけど、俺の心臓は飛び出さんばかりにドクドク言っていた。"緊張しちゃって"、たったその一言でここまで動揺するなんて。
それだけじゃない。目だけ出ているその格好がなんというか、愛らしいのだ。
これじゃあ月島に単細胞と言われるのも仕方ないのかもしれない。
「電気、消していいか?」
『あ、お願い。ドアの横だから』
「っと、これか」
俺は出来るだけ冷静を装った。パチッと音がして、部屋が真っ暗になる。俺は足元に気をつけながら布団に潜った。
『影山くんってさ』
「ん?」
『サーブ上手だよね。誰に教えてもらったの?』
「及川さんだ」
『なんとなく分かるかも。徹さんって"天才セッター"なんて言われてるけど、そんなんじゃないよね。きっと想像できないくらい努力してるんだろうなぁ…』
朱里の言葉に何も言えなかった。本当だったから。あの人は天才なんかじゃない。そこに行くまで途方もないくらい努力を重ねてきたんだ。
「俺と及川さんは同じ中学だったんだ」
『知ってる。北川第一中…だっけ?』
「そう。ほとんどの奴が青城に行くんだけど俺は白鳥沢を受験で落ちて、烏野に来た」
『そっか…』
「でも、烏野に来てよかったと思ってる」
『うん。あのさ、もしよかったらなんだけど、影山くんが中学生だったときの話、教えてくれる?』
「おう。俺は小学生の頃からバレーやっててさ。当時は金田一…あのらっきょみたいな奴が相棒だったんだ…」
『へぇ、彼が。それで?』
「それで…」
それからは、俺が思い出せる限りを話した。朱里は真剣に訊いてくれたから、それが嬉しかった。
夢中になって話して、気づいたときにはどちらからともなく寝ていた。