第6章 恐怖の期末テスト。
部屋に着くなりベッドにボフッと倒れ込んだ朱里は、すぐに寝息をたて始めた。
『すぅ…すぅ…』
暗くてよく見えなかったが、部屋は女子にしては物が少ないように感じた。女子らしいかわいいものが少ない分、本が異常に多く見えた。本棚のほとんどを小説が占めているが、下の方にはマンガも幾らかあるようだ。
もぞもぞと朱里が寝返りを打った。仰向けになって寝るその姿は、無邪気な子供のようで、それでいて安心しきっていた。
俺だって一応男なんだからな。
思春期の高校生の前でどこまで無防備だ。
ベッドに近寄り、すやすやと眠る朱里の額にかかる前髪をそっと撫でた。俺はその額に触れるか触れないかのぎりぎりのところに唇を寄せた。今の俺にはこれが限界だ。というか、彼氏でもないのに図々しいだろ。
朱里はくすぐったそうに身を捩った。一瞬起きるかとどきりとしたが、幸いにしてそのまま眠ったようだった。
ダメだ、ここにいたら理性がもたない。
半ば逃げるようにして部屋から出る。リビングに戻ると、コンビニから戻ったらしい青司さんに遭遇した。
「ビビったぁ、飛雄くんか。て、あれ?うちの妹ちゃんは?」
『眠たそうだったんで、部屋まで連れていきました』
「ご苦労ご苦労!アイス買ってきたんだけどなぁ。アカリは10時近くなるとすぐ眠くなるんだよ」
ほんと子供だな、と優しく笑う青司さんはお兄さん、という顔をしていた。俺はなんであんなことをしたんだ、と罪悪感に襲われた。
そうしている内に日向が風呂から戻ってきた。青司さんが譲ってくれたので、ありがたくいただくことにしよう。
こういうときは風呂に限る。
これ以上何かしないためにも、早く風呂に行きたくて、廊下に出た。結局、風呂の位置を訊きに戻るはめになるのだが。
【影山side fin.】