第6章 恐怖の期末テスト。
しばらく問題と格闘している風を装っていたが、本当にわからない問題があったので頭を抱えて悩んでいた。仕方ない、とばそう。
『そういえば兄さんは?』
テレビを見ながら朱里が訊いてきた。さっき出掛けると言って家を出ていったのは、つい5分ほど前だ。
「青司さんならコンビニ」
『またぁ!?』
なんなのよあの人…とうんざりといった様子で朱里は唸った。俺としてはなんなんだよこの状況と言いたいが。
朱里はチャンネルを変え、毎週金曜日にやっている映画番組を観始めた。始まってすぐだったのか、俺もなんとなく観ていると、話の流れがわかってきた。
どうやらエイプリルフールにいろんな人が嘘をつきまくる話らしい。特に興味もなかったので、問題に集中することにした。
「朱里は勉強いいのか?」
『大丈夫、と言いたいところだけど、月島くんにあんなこと言っちゃったし、頑張らなきゃだよね…』
朱里は観たかったなぁ、とさも惜しげにテレビを消した。ずるずるとソファーから滑るように下りて、英語の問題集に取りかかった。
カリカリとシャープペンの芯が紙の上を滑る音だけが部屋に響く。しばらくすると朱里の動きが止まった。見れば、こっくりこっくりと船を漕いでいる。
「おい、そこで寝るなよ、部屋行けって!」
焦りながら言うと、とろんとした眠たそうな目で見てきた。
『ん~…連れてって、30分だけ寝る…』
「わかったから、部屋どこ?」
『廊下出て右側二個目…』
「そんだけ喋れるなら自分で行けるか」
『やだぁ…ついてきてよ』
なんっでこういうときに限ってそういうことを言うかな、朱里は!いつもと違いすぎるだろ、あのツンツンしたのはどこ行きやがった!
俺が一人悶々としているのも知らず、ふらふらと歩く朱里は本当に危なげだったので、部屋までついていくことにした。