第5章 日常②。
『この後…どうしよっか』
「帰ってもすることねーな…」
『あ、それなら本屋さん行きたい!』
「ウッス、とりあえず店出るか」
お会計をしようとレジに向かった。財布をリュックから出そうとしていると、影山くんが二人分まとめて払ってくれた。
『影山くんっ、自分の食事代くらい自分で払うから、いいよ』
「普通男が出すもんだろ、こういうの」
『そう…なのかな///』
また、不意打ちでそういうこと言う。
変に意識させないでよ。
「で、どこの本屋?」
『えっと、うちの近所の』
「あそこか、行くぞー」
『うぇーい!』
「………なんだよ、それ」
『別に自分で言っといて恥ずかしいと思ったから突っ込まないでおいて…///』
「ばーか」
『なっ、バカって言う方がバカなんですー』
「お前もバカって言ったからバカだな」
『そんなこと言うなら影山くんだって!』
言ってることが支離滅裂で、顔を見合わせて笑った。二人とも、今日一日の中で一番自然に笑ってたと思う。
本屋さんには5分くらいで着いた。影山くんはマンガを見ているらしいので、私は小説コーナーに向かった。
あ、あったあった!
ハマってる小説の最終巻。この作者が大好きで、シリーズを全部集めているところ。最後になってしまうのは惜しいけど、どのように物語が終わりを迎えるのか、楽しみでもあった。
影山くん、マンガコーナーにいるって言ってたな。本を片手にマンガコーナーに向かうと、影山くんが一冊のマンガを持っていた。
『それ、買うの?』
「うぉっ!?」
『ふふっ、ごめんごめん』
「ビビったー…」
『あ、それ新巻じゃん!』
影山くんが持っているのは、兄さんが集めている少年マンガの最新巻だった。少年が海に出て、世界一のお宝を仲間と共に探す、冒険物語。
「朱里もマンガとか読むんだな」
『うん、たまにね。兄さんが買ってくるの』
「青司さんが?」
『そうそう。あの人マンガ好きなんだよね』
「見えない…」
『影山くんと一緒で、バレーバカだよ?』
「…褒めてるのか?」
『ううん、バカにしてる』
「てめっ!」
『買ってきちゃいまーす!』
逃げるが勝ち、だもんね。
私は小説とマンガを持って、逃げるようにレジに向かった。