第5章 日常②。
「ハラ減った、メシ食おう」
『えっ、急だね…』
影山くんに買い物に付き合ってもらった後。私たちは時間を持て余していた。時計を見るとお昼にはちょっと早い時間。でも言われてみればお腹が空いた。
『早いけどお昼にしよっか』
「何食う?」
『とくには…』
「肉がいい」
『それなら、一階に牛丼屋さんあるよ?』
「決定!」
影山くんが即答したので、牛丼屋さんに決まった。一階までエレベーターで下りて、お店に向かう。まだお昼時ではないのに、店内は既に人でいっぱいだった。運よくあいていた席に座り、メニューを見た。
『私はチーズのにしようかな。影山くんはどれにするの?』
「ちょっと待て!」
ぶつぶつ呟きながらメニューとにらめっこする影山くんが面白くて、クスリと笑った。それに気づいた影山くんが訝しげに訊いてきた。
「なんだよ?」
『ふふっ、なんでもないよ。決まった?』
「おう」
『すいませーん、チーズの並み一つ』
「牛丼の大盛り、卵つけて」
店員さんは注文をとると、かしこまりましたと慌ただしく去っていった。それから料理が来るまでは他愛のない雑談をしていた。月島がクソ腹立つとかトスがどうとか、気づけばバレーのことはまかり話していた。
「お待たせしましたー」
『わぁ、いただきます!』
「いただきます」
10分と待たずに牛丼が出てきたので、いただきますを言ってから食べた。影山くんも言っていたのはちょっと意外だった。
「女子でも食うんだな、牛丼とか」
『へ?』
「いや、あんま食わねーと思ってたから…」
『そうなのかな?他の子はどうだか知らないけど、少なくとも私は好きだよ、牛丼』
「朱里だけ例外か…」
『失礼な!』
並み盛りの私と大盛りの影山くんが食べ終わるのは、ほとんど同時だった。
『食べるの速くない?』
「お前が遅いだけだろ」
あ、なんか突っ込むのあほらし…
店員さんが食後に麦茶を出してくれたのでそれを飲みながらくつろいでいると、影山くんの視線に気づいた。
『な、にか?』
「この後どうすんだ?」