第11章 終わりと始まり
~数分前、談話室~
ペ)「…まさかとは思いますが、船長。
あの薬使いました?」
2人が出て行くと少し顔を顰め、ペンギンが尋ねる。
それにローは顔色一つ変えずに小さく頷き返事をした。
ペ)「はぁ…あれ程使うなと…」
ロ)「緊急事態だから仕方ねぇだろ。
あいつがうんともすんとも言わないのが悪い。」
ローは“シャンブルズ”で物置部屋にある予備のクルー服を自分の手の上へ乗せ、広げてサイズを確認する。
ペ)「あの薬はまだ研究中のはずですが」
ロ)「研究つっても完成してんだろ。
動物実験が出来てないだけで。」
ローとの会話に段々機嫌が悪くなるペンギンは苛立ち気に口を開く。
ペ)「それが問題なんでしょう、それで記憶が全部消えたりしたらどうするんですか」
ロ)「じゃあどうやって確かめるつもりだったんだ。
モルモットで実験した所で結果は出ない。
なら直接試した方が早いだろ。」
ペ)「だからって…!」
ロ)「ならなんだ、このままずっとあいつの心臓潰し続ければ良かったか?
随分優しいな」
ペ)「……っ」
ロ)「作戦は与奪屋を攫った時から後戻り出来ねぇ。
とにかく今は全員に話して合わせるだけだ。
…そろそろ頃合いか。」
ペンギンが言葉を詰まらせたのを見るとローは持っていたクルー服を宙に放る。
ペンギンがその行動に首を傾げると同時に手を前に出して、
ロ)「シャンブルズ」
と、一言。
すると服があったところにシャチが現れた。
ペ)(ああ、…シャチお疲れ)