第10章 【番外編】副船長の過去
ロ)「薬剤師…?
ならそこらへんの草でも毟ってろ」
ペ)「いやー、薬作っても売れなくなっちまってさ。
暇なんだよな」
ペンギンの困ったように笑う顔を見て怪訝な顔をするが特に興味がないのか鼻で笑った。
ロ)「まあ世の中医者がいれば薬剤師なんていらねぇってのとだろ」
ペ)「おいおい、聞き捨てならねーな。
医者は外傷しか治せねぇだろ。
風邪をメスで治せねぇから薬があ、る……ぐぅ……っ!!!!!」
突如苦しそうに胸を抑え、その場に崩れたペンギンを見てローは不意に手を伸ばす。
ロ)「おい、どうした。」
何の返答もなく、揺さぶろうと肩に手を触れると同時にペンギンが勢い良く顔を上げた。
ペ)「なーんてな!
あ、んた仏頂面だ、ら少しく…らい驚い、かお、させたかったん…だけどむ…り、か、つか、目のま、えで人が苦しそ、にして、…ら少、くら…ぉどろ、て…心ぱ、ぃしろ、よな!まあフ…リだ、か…いいけ、どさ…ッ」
急に多弁になり顔色が悪く、息が荒いまま話し出すペンギンを見て仏頂面のままローは口を開く。
ロ)「フリにしては急に能力切れたな」
ペ)「っ、そ、こは俺の演ぎ力が、…だな、」
ロ)「お前、病気だろ」
ペンギンはローの言葉に目を見開くと僅かに震える。
ペ)「ちが、俺は………!」
ぎゅっと拳を握り締めるとペンギンは逃げるように走って森の奥へと駆け出した。
ロ)「…なんだあいつ」
ローは僅かに首を捻ると立ち上がり、土を払って街へ向かった。
~森の奥~
ペ)「はァ、は、っ、……!
くそ、くそ……!!!
さっき薬飲んだばっかなのに…!!」
苦しそうに胸を抑えると震える手でポケットから薬を取り出し、飲む。
カラカラに乾いた喉に無理矢理唾を出して飲み込むと徐々に呼吸を落ち着かせていく。
ペ)「…久振りに人と喋ったな。
病気……か、
俺、死ぬのかな……死ぬんだろうな」
ペンギンはぼーっと手のひらを見つめるとそのままゆっくりと目を閉じ、眠りに落ちた。