第6章 前方注意
シ)「俺が恨まれてることくらい百も承知だ。
…でも、母さんのことは好きだろ?」
貴)「…きらい…」
シ)「……なんでだ?」
叩かれた頬を押さえながら、止まらない涙をもう片方の手で拭う。
痛い、痛い。
どこか、悲しそうな顔をしたお父さん。
貴)「だって、死んじゃったから、」
お母さんのことが大好きだったことは、1番わかってた。
貴)「お父さんも、お母さんも私も置いてったから、きらい」
貴)「だいきらい」
痛い、痛い、心が痛い。
本当は大好きなのに。
お父さんはお母さんのこと、大好きなのに。
お母さんもお父さんのこと、大好きだったのに。
1番1番、わかってたのに。
それを認めれなかった私が嫌い。
独りぼっちが嫌だからって、
今までずっと、お父さんを恨んでた。
嫌い、嫌い、私が嫌い。
自分が嫌い。
外を傷つける側に置いて、
悲劇のヒロインぶった私が嫌い。
涙が止まらない私を、お父さんが優しく抱きしめてくれた。