第6章 前方注意
シ)「お、クレアおはよう!」
父が来てから数日が過ぎ、今日は別れの日である。
しばらくここを拠点にしていたらしいが、もうここを離れて、遠いところに行くらしい。
暖かな日が差し込む窓際に近いイスに腰掛けてコーヒーを飲むお父さんから、笑顔で挨拶をうけ、
貴)「…おはよう」
小さく挨拶をかえした。
シ)「寂しいな…クレアも寂しいだろ?!
しばらく父と会えなくなるんだぞ…
俺は寂しくて寂しくて…!」
ル)「おい、また頭が泣いてるぞ」
べ)「これ以上出港伸ばすとか言わないでくれよ、頭」
店内が楽しそうな雰囲気に包まれても、私だけ別の場所にいるみたいだった。
海賊は、嫌いだ。
いや、海賊は自由でいい、と言うお父さんが嫌いだった。
ただ自分勝手なだけのくせに。
-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.港-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.-.
母)「それじゃあ、…気をつけて」
シ)「おう!
次会うのは、世界を一周した後になる。
…クレアを頼んだ。」
母)「ええ。
あなたは何も心配せずに、
まっすぐ前に進んで下さいね。」
シ)「ああ。…振り返ったりはしねぇよ。」
母)「ふふ、もちろん。
私はそんなことする人に惚れた覚えはありませんから」
「行ってらっしゃい」
母がゆっくり別れを告げれば、
父は穏やかに笑みを浮かべて私達に背をむけて、
船をだした。
………………………
貴)「お母さん、もう見えてないよ。
…手、振るのやめたら…?」
母)「あら、そうとは限らないわ。
もしかしたら見えてるかもしれないじゃない」
そうしてお父さんが出港した後もお母さんは結局、船が水平線から消えるまで手を振り続けた。