第15章 けんもほろろ
クレアちゃんが倒れて1日目の朝。
部屋を覗いたら眠っているクレアちゃんには既に猿轡が咬まされていて。
困惑する俺に、隈を浮かべた船長が言った。
『こいつが起きた時、側に誰もいなかったらどうする』
と。
船長は、多分。
クレアちゃんが舌を噛んで自殺するのではと、 夜中中ずっと考えていたんだと思う。
昔から船長が不眠症紛いなことは知っていた。
嫌なことがあった次の日には大抵隈を作っている。
1番付き合いの長いペンギンしか理由は知らない。
いや、1番付き合いの長いペンギンですら。
その真相はあまりはっきりとしていなかった。
ただ、船長がいない時に海軍からの集中砲火をくらい、重症を負ったクルーを見て。
僅かに手を震わせていたのを俺は見た。
船長は優しい。
この船に乗る誰もがそれを知っている。
……知っていたはずなのに。
シ)「…クレアちゃん……」
もしかしたら、もう。
思い出した記憶に埋もれて、
君は思い出してくれないかもしれない。