第14章 充溢が生む空白
貴)「う、うぅ…うぅぅ……!」
開いた口を閉じて、代わりに呻き声を上げる。
いっそのこと、忘れてしまえたらどんなに楽か。
せめて私を見るローの瞳から逃れたくて、
腕で顔を隠す。
すると急に喉が圧迫された。
ロ)「ああ…そうだ」
ローに、喉を締め付けられる。
ロ)「全部俺のせいだ。
恨むなら恨め。だが思い出しただろ?
俺に何をされたか。
また痛い思いしたくねぇなら黙って従え!!
これ以上暴れるならこのまま絞め殺すぞ…!!」
シ)「ちょっ……船長!!!」
ぐぐ、と喉を締める手に力が込められる。
苦しい。
殺す気のない手が、
優しい手が、
優しい言葉が。
胸を締め付けるように、苦しませる。
ああ、そうだ、ローのせいだ。
そうでもしないと、
誰かのせいにしないと。
心が苦しくて、
可笑しくなりそうで。
だから、ロー。
貴)「……おね、がい…」
その優しさに甘えさせてよ。
貴)「…ころ、して………………!」
もう、疲れたから。