第14章 充溢が生む空白
ロ)「…………!!」
乾いた音が響く。
息は荒いまま、目から涙は零したまま。
なんで思い出せなかったの?
なんで忘れていたの?
大切な記憶なのに、
大切な人なのに。
…ねえ、ロー。
都合のために人の記憶を消したのも、
閉じ込めたのも、
私が皆を忘れていたのも、
エースさんが、死んだのも。
全部、全部…!!!
貴)「ロー!!!!!!!!」
“あんたのせいだ”。
そう言おうとして口を開く。
けど、言葉が出ない。
だって、思い出してしまった。
エースさんとの記憶を。
白ひげ海賊団の皆さんの記憶を。
ローに酷いことをされた記憶を。
この船で、過ごした記憶を。
全部、全部思い出してしまった。
変わらない記憶。
変わらない真実。
元の記憶が戻ったって、消えない。
嵌ったパズルのピースは、戻ってきたピースが隣に嵌められても、外れることはない。
もう、全部埋まってしまったんだ。