第14章 充溢が生む空白
ローの大声にびくりと肩が鳴る。
違う、違う。
無理じゃない。
ロ)「一日たってる…!!
行くだけ無駄だ!! 」
貴)「っ、…じゃ、な…」
否定しないで。
自分に言い聞かせたい。
貴)「むだ、じゃ…なっ、い…むだじゃ、ない…!無駄じゃない…!
ムダジャナイ!!!
まダ間にアゥ…ちが、あぁぁ…!!」
無駄じゃない、
まだ間に合う。
そう呟く度に頭から何かがぬけて、
心が消えていく。
そしてその空白に、思い出した記憶が埋まっていく。
詰まっていく。
息も、何もかも。
貴)「たす、け…な……とっ、ェ…すさっ、」
苦しい。
ロ)「落ち着けって言ってんだろ!!
おいシャチ!!鎮静剤持ってこい!」
シ)「え、あ…はい!!」
貴)「………っ、!」
苦しい、苦しいよ。
助けてほしいよ。
けど、違う。
貴)「…ゃ…いやだ!!!」
そうじゃない。
そんなもの打たないで。
人をなんだと思ってるんだ。
ローは受け取った注射器の針を私の腕に刺す。
戸惑いもなく。
この感情を、
この気持ちを。
そんな薬で、抑えられると思ってるの?
頭がカッと熱くなって、
もがいていた手に力が篭る。
そしてそのままローの頬を
思い切り叩いた。