• テキストサイズ

名もなき恋物語【ONE PIECE】

第13章 差し引きゼロ


消した、という言葉は深く考えないことにして。

貴)「ペンギンさんの能力って、どんなの?」

ぺ)「それは秘密〜」

適当にはぐらかされると 少し頰を膨らませ、改めてその姿を見る。

よくよく見たら髭に立体感がなかった。

貴)「あ、髭は描いてるんだ」

ぺ)「今日はね。

前もって格好する時は前々日くらいから髭剃らないんだけど…

因みに隈も描いてるよ」

貴)「ああ、だからかな…濃い気がする」

ローの目の隈も凄いけど、それを大袈裟に表現している様な隈に少しだけ笑った。

でもそんな私を見てペンギンさんは軽く唸り、首を傾げる。

ぺ)「いや、今日の船長の隈、こんな感じたったよ。

というかいつもはこれより酷い位。」

貴)「いやいや、だって昨日はそこまで酷くなかったよ?」

ぺ)「うん、昨日はね」

ペンギンさんの返答に口元の笑みが引きつる様に固まった。

貴)「…不眠症?」

ぺ)「まあ、そんな感じかな。

俺と会った時にはもう隈出来てたし」

「知らなかった」を口にしかけてやめた。

私は知らなすぎる。

代わりに「そっか」と言って俯くとペンギンさんが笑った。

ぺ)「知らないって、良くない?

それだけクレアちゃんの隣では安眠出来たってことだ思うけど」

貴)「そう…なのかな」

目を伏せたまま呟いた。

そうなのかな。

………そうなら、いいな。

ぺ)「…昨日船長と喧嘩したでしょ?」

ペンギンさんの質問に私は否定しなかった。

けど、肯定もしない。

喧嘩、と呼ぶには言葉数が少なすぎた。

ぺ)「…手、切れてる」

昨日の傷をそっと撫でられる。

自分で抉ったから変にかさぶたが飛んでいて汚い。

私が何も言わないでいるとペンギンさんは私の手を自分の顔に近づけて傷に口付けをした。

貴)「っ、?」

ぺ)「クレア」

灰色の目が私を見る。

“ロー”の灰色の目なのに、

“ロー”の声なのに。


ぺ)「“俺”なら優しく出来る」


まるで、別人。



でもそこには“ペンギンさん”も居ない気がした。
/ 173ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp